書誌詳細

シンジュ フジン/ブンシュン ブンコ 真珠夫人

書名

シンジュ フジン/ブンシュン ブンコ 真珠夫人

シリーズ

文春文庫

著者

キクチ,カン 菊池/寛∥著

出版者

文藝春秋

出版年月日

2002.8

配架場所

エディットタウン / ブックストリート / 6-E-09

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その他

言語

ISBN

9784167410049

所蔵情報

登録番号

860000649

大分類

ET6:男と女のあいだ

中分類

ET6-11:傑作ラブロマンス

小分類

ET6-11-04:憎しみと紙一重

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千夜千冊

編集を仕事とする者にとって、菊池寛は大きい。面妖でもある。どのくらい大きいかというと、作家や戯曲家として、「文芸春秋」の創刊者や文芸春秋社の起業家として、新聞小説の変革や芥川賞・直木賞の創設などを通して、文芸的なるものを「経国の大事」としたことが大きい。
 しかしもっと端的には、編集と市場の関係をきわめて「柔らかいしくみ」ととらえ、これを直截自在に表現メディアや出版組織や舞台プロデュースにしていったことにおいて、その後の編集事業的昭和史にはかりしれないほどの影響力をもったことが、やっぱり大きかった。
 とくに「文芸春秋」である。これは創刊者菊池だけの功績ではなく、佐佐木茂索や池島信平らの後続者の努力もめざましいのだが、ぼくはいまもって「文芸春秋」こそが日本の雑誌のエディトリアル・フォーマットに永遠の金字塔をたてた成果だと見ている。『情報の歴史』を見てもらうとすぐわかるだろうが、「タイム」とほぼ同時期の創刊だった。
 この日本的エディトリアル・フォーマットを破るものはなかなかあらわれない。ぼくの父は「文芸春秋」「東洋経済」「俳句」をずっと購入して揃えていたが、その父が「週刊新潮」が登場してきたのを見て「これはひょっとしたら第2の文春になるかもしれんな」と言っていたのを引き継いでいえば、「文芸春秋」に匹敵できるのはせいぜい「週刊新潮」か、さもなくば花森安治の「暮らしの手帖」くらいであろう(506夜)。ユニークな雑誌ならいくらもあるが、フォーマットを変えない魅力をもっている雑誌は稀有なのだ。
 もっとも菊池の雑誌は「文芸春秋」だけではない。「映画時代」「創作月刊」「婦人サロン」「モダン日本」「オール読物」「文芸通信」「文学界」を創刊あるいは継承再刊し、昭和14年には海軍省の依頼で戦意高揚雑誌「大洋」なども作った。
 映画の企画や経営も引き受けている。昭和4年の溝口健二が監督した『東京行進曲』は、原作が菊池で、主題歌が西条八十作詞・中山晋平作曲・歌手佐藤千夜子という“黄金”の組み合わせで、小説・映画・歌謡曲の“三位一体方式”が初めて飛ばした大ヒットになった。昭和の大衆消費文化の幕開けはここにあったといっていいくらいだった。さらに昭和18年からは大映(大日本映画製作株式会社)の社長にも就任した。
 どうも何かが人に抜きん出て、すぐれて異能なのだ。何かというのは、人をメディア的に惹きつける異能性というものである。
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読書メーター

ykmmr (^_^)

この物語を、日本版(菊池版)『椿姫』と思い、読み始めたが、本当に似たり寄ったりと思える。『真珠夫人』瑠璃子はその高貴な姿と、時に男の意表を突き、彼らを糸で束ねて、真珠として自分を飾る訳だけど…。そして意地で貞操なども貫き、母娘という…何というか泥臭い三角関係、そして最後の悲劇…。『椿姫』と同じように異性に囲まれた女性のロマンが味わえる話である。やはり時代背景は大分古いし、ページ数も多いが、読みやすく読ませてくれちゃう。最後の川端の解説で、菊池寛という人物の『こだわり』。やっぱりな…と自分は思った。

116

投稿日2022-02-28

青蓮

約600頁に及ぶ大作ですが、とても面白く読みました。類まれなる美貌と鋭い知性を武器に妖婦と化し、復讐のために男を翻弄する瑠璃子。これだけだと何だか酷い女性に思えますが、その内実はなかなか苦しく切ないものがあります。「男性本位の道徳に妾は一身を賭しても反抗してみたいと思っている」という瑠璃子の言葉は、本書が書かれた当時は新鮮な響きと大きな意味を持っていたように思えます。作中の文学議談も興味深い。ラストの瑠璃子と直也の邂逅は悲しくも美しく、最後まで操を立て通した彼女の強さと彼への愛の深さに心打たれました。

113

投稿日2018-01-08

ミカママ

ドラマも観てないが、イメージ的にもっとエロスを期待していた私には、拍子抜け。だって、作品中誰もエッチどころかキスすらしてない(>_<)主人公の瑠璃子に至っては、男性たちの気持ちを弄びつつ(そして死にまで至らしめてしまう)も処女のまま死んじゃうし。そして作品中、「処女らしく」、とか「処女のように」とか、処女という単語がうんざりするほど出てきて。時代、ですかねぇ。でもこれが新聞小説となって、世間を騒がせたであろうことは、容易に想像できます。解説はなんと、川端康成大先生! 

95

投稿日2015-02-08

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